音楽における「パクリ」と「引用」の境界線 【第1回】

標題にも書いた通り、音楽においては「パクリ」なのか「引用」なのか、はたまた参照しただけなのかという問題がつきまとう。「オマージュ」や「リスペクト」といった言葉もある。

誰かのメロディを、そのまま自分の曲に使うのはダメとされている。ところが曲の一部のサンプリングは容認されている(ように見える)のはナゼなのか。

一方で、コード進行には著作権がないとも聞く。

テーマが大きすぎて、1回で書ききれることではない。第1回目として、音楽制作におけるなにかしらの気づきやヒントになるようなものが書ければと思う。たぶん全部で5~8回くらいになる。

■ パクリと引用の境界線は?

ちょっと音楽の話から離れてみよう。

東京オリンピックの際、そのエンブレムのパクリ騒動があったことを覚えている方も多いだろう。

友人に、大手広告代理店の案件を手がけるデザイン事務所で働いている人がいる。その当時、この件について、「どう思うか」と「実際にこういうことってあるのか」を聞いてみたことがある。

てっきり「パクリは悪である」と言うのかと思ったら、「新しいデザインをつくるにあたって、既存のものを参考にすることはよくある」とのこと。

通常は、2つ3つ以上を組み合わせることが多い。この件のように完全に元ネタ1つってことは、まずしないとのこと。

最前線のプロとしてやっている人の意見として、こういったことが聞けたのはけっこうな驚きだった。

個人的には、これは音楽にも同じことが言えるのではないかと思っている。

■ 書籍における引用の許容範囲

以前、書籍における著作権、引用に関するセミナーに行ったことがある。

講師は、弁護士で著作権を専門でやられている福井健策先生。著作権がらみで何かニュースがあった場合、新聞やテレビにコメントが紹介される方だ。

そのセミナーで学んだことは、絶対的に引用はダメということではなく、グレーな運用が多いということ。ポイントは、下記が守られていることが条件になる。

1 主従関係が明確である
2 出典元が明らかになっている

要は自分の書いていること「主」に対して、それを補う必要のある文章の引用を「従」とする。これなら、他の本から文章をそのまま持ってきてもよいとのことである。

ただし、それをどこから引用しているのか、書籍名などは明示しなくてはならない。

ただ、これをそのまま音楽に当てはめるのは非常に難しい。

■ アイディアは組み合わせでしかない

(1)オリジナル曲をつくるには、いくつかの既成曲を組み合わせればよい

音楽における引用の実例と功罪の話は次回以降に書いていこうと思う。ここでは、オリジナル曲の制作の際の1つの案を提示したい。

それは上のデザインの現場の話で触れた件を、音楽にも流用すればよいでは?ということ。

いくつかの曲を組み合わせば、オリジナル曲はできてしまうのではという提案である。

(2)新しいアイディアは、既存のものの組み合わせでしかない

一つ、本の紹介をする。

「アイディアの作り方」という本になるのだが、ご存知だろうか。ここには「新しいアイディアは既存のアイディアの組み合わせからしか生まれない」と書いてある。

原著は1940年(80年以上前!)に刊行されており、もうこの時点で気づいている人のいる真理なのだろう。ちなみに日本語版は35年前に刊行されている。

* アフィリエイトは現時点でやってないので、興味のある人はアマゾンで検索してください。

(3)複数の曲を組み合わせれば、それはオリジナル?

オリジナル幻想についての話はここでは控える(詳細はまた別の記事にて)。一方、現代のポップミュージックにおけるオリジナリティにも同じことが言えるのではないだろうか。

つまり1曲の元ネタからひとつの曲を生み出すのであれば、それは単にその曲のカバーでしかない。一方で、複数の参照元を用意し、それらのネタを組み合わせてつくるのだとすれば、それは新しい曲ということではないかということである。

曲を制作するDTMerの立場に立てば、その原曲のコピーさえできて、それを組み合わせられれば、オリジナルはできてしまうのではないかということである。

「そのネタをどう組み合わせればよいか」というところにセンスが問われる。ここにこそオリジナリティを発揮できるのでは?ということである。

話が散らかり始めたので、続きはまた次回。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました